ここは藤崎家の実家…というか居城。 その一角に少し大きめの部屋がある。 「…殿下、戻ってきませんねぇ」 「大方向こうでの生活に没頭しているのだろう、仕方のない事だ」 「でも退屈…陛下の命令つまんないんだもん」 その部屋には二人のメイドがいた。 片方は黒い髪を伸ばした清楚な雰囲気を漂わせる面立ちの女性。 もう片方は藍色の髪を伸ばした大きめの目の可愛らしい少女。 ダブルより大きいであろうサイズのベッドに腰掛けて、二人はくつろいでいた。 何をするでもなく、ただぼーっとして、たまに言葉を交わして。 「…ねえアレイシア」 「何だ?」 アレイシアと呼ばれた女性が振り向く。少女は続けて言った。 「…殿下の事、どう思ってるんですか?」 「…何を今更、仕えるに値するいい主だと何度言えば気が済む」 アレイシアが微笑む。 「じゃあ、同じ事を問おうかセレニア」 「ふぇ…?」 セレニアと呼ばれた少女はぽかーんとした表情でアレイシアを見ている。 「どうって…いい主人だと思ってるよ?」 「………」 アレイシアは疑いの視線を投げる。セレニアは少し身じろぎするが、しっかりと目を見ている。 「…わかったよぅ、確かにちょっと殿下が気になってる所はありますよ。  でも、本人の前で言えるはず無いじゃないですか…」 「まあ、そうだろうね」 そう言うとアレイシアはベッドに寝転んだ。軽く足組みをして、目を閉じる。 それに合わせるようにセレニアも寝転がる。そしてゆっくりと口を開いた。 「…一度だけでいいからさ」 「うん?」 「殿下の両隣で寝たいね」 「…そうだな」 そう言い、二人は笑った。